「細雪」で知られる谷崎潤一郎。この代表作は軍部によって連載中止に追い込まれたが、戦後見事に花開いた。「細雪」上梓の2年後、谷崎は京都下鴨、下鴨神社のすぐ東に転居する。「石村亭」と名付けられたこの住居は、現在、日新電気によって保存され、迎賓館として活用されている。公開されていないが、外から眺めることはできる。ここが「五位庵」として登場するのが「夢の浮橋」。短い作品なので、手にしてみるも一興かと。
実は10年ほど前、思いもかけず日新電気のご好意で、フランス人の友人とここを訪れた。谷崎の座ったであろう陶器のスツールに腰を下ろして「お尻合い」などと案内していただいたのだった。